医療法人明和病院

医療機能評価機構認定病院、臨床研修指定病院、兵庫県がん診療準拠点病院

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患者さんを津波から守る

患者さんを津波から守る

2017年1月28日

明和病院は西宮市の海沿いに位置している。
今後起こりうる南海トラフの地震により、津波が発生した場合には
大なり小なりその影響を受けるはずである。

平成23年3月に発生した東日本大震災を受けて、
改めて津波による被害がクローズアップされ、
西宮市においても地域防災計画が改訂された。

さて、改訂された地域防災計画の想定によれば、
南海トラフの地震が発生した場合、
西宮市では震度5弱~6弱(長い横揺れが1分以上継続)、
津波の第1波は90~110分で到達し、1m規模の津波の到達時間までは
112分と予想されている。

更に、地域の高低差や建物の立地などを考慮した
ハザードマップによれば、明和病院周辺でも
30cm程度の浸水が予想されている。

では、津波が押し寄せてきたら明和病院は何をすべきか。

先ずは患者さんの安全確保、そのためには1階にいる患者さんを
1時間半から2時間以内に全員2階以上のフロアに避難誘導しなければならない。

明和病院では平成25年から訓練を実施し。
平成26年からは夜間、病院に職員が少ない状況で地震が発生したとの想定で
まさに『ガチ』の訓練を毎年繰り返してきた。

今年もまさに今日、1月28日(土)に訓練を実施した。

当直医師、当直技師、薬剤師、そして夜勤の看護師が
予め作成されたアクションカードをもとに振り分けられた
応援先の部署(北館1階病棟とER)に駆けつける。

常に『何が起きても冷静沈着』なER看護師は、
病院幹部が到着するまでの間、災害対策本部を立ち上げ
建物の被害状況から患者さんの避難状況まで把握し
病院の司令塔の役割を果たす。

【災害対策本部】
災対本部

医師も患者さんの避難誘導に全力を尽くし、
避難が完了すれば手当が必要な患者さんのケアにあたる。
DSCF7124

時間外は医師の数も少ないが、その中で必ず研修医も1名当直している。
この時ばかりは『研修』の肩書きを捨て、
一人の医師として立ち回らなければならない。

訓練を始めた当初(平成25年)は歩けない患者さんを
布製の担架や車椅子ごと階段で運んでいたが、始めた途端に気がついた。

平成25年当時の訓練写真
【布担架による搬送】
H25布担架
【車椅子による搬送】
H25車椅子

“階段を昇り降りするとき車椅子による患者搬送は危険だし重たいし時間がかかりすぎる・・・”
“布製の担架はそれなりに有効だが、数をそろえるには費用がかかりすぎる。”

そこで、普段からお付き合いのある近隣消防の救命士さんたちの協力を得て
安全に素早く患者さんを搬送する手段を教えてもらった。

用意するものはひとつだけ。それは『患者さん1人に1枚のシーツ』。

シーツは入院患者さんであれば誰でもベッドにシーツが敷かれているので
実際には何も必要ない。

さて、シーツ1枚で劇的に変わった。

まず、同じフロアを移動する場合、
患者さんはシーツに横になり、手を胸の辺りで組む。
次にシーツで患者さんをくるんで頭側のシーツをねじって絞る。
そして、

一気に引く!!!

これで、たった一人の職員が同じフロアであればどこまででも引いていけるし
意外と引く力も必要ない。因みに、段差のないフロアをいくら引いても
患者さんは痛くも痒くもない(はず)。

こうして沢山のシーツにくるまれた患者さんが階段の前に集められる。

【集められた患者さん】
ひと包みに1人ずつ職員が扮した患者さんが入っています。
集められた患者

次に、今度は患者さんの頭側と足側の両サイド、計4人が
外側からシーツをクルクルと巻き込み持ち上げる。
コツは、患者さんの体のギリギリまで巻き込むこと、
こうすることで患者さんの体がブレずに安定する。

そして、階段をゆっくり上がる。
階段をゆっくり上がる

スタッフがはめている滑り止め付の軍手は、
かつてスタッフ役をした職員からの意見を参考に取り入れた。
これで手が痛くなるのも格段に軽減された。
(これがないと、1人搬送しただけで握力がなくなる)

病院という職場は、医師も看護師も入退職が多いので、
毎年少しずつ改良を加えながら何度も同じ訓練を繰り返す。
こうして新しく入職した職員にも体験してもらうことで
いざという時に滞りなく動けるよう備えている。

命を救う方法は、何も手術や薬だけではなく、
最後は『人』である。

決して待っているわけではないが、
いつか必ずやってくる“その時”に備えて。。。


【 平成29年1月31日(火)追記 】
訓練当日、神戸新聞の記者の方が取材に来ていたのですが、
なんとその時の内容が1月31日付の神戸新聞の朝刊に掲載されました!!
研修1年目のK先生(一番右側)もしっかり写っています。
170131神戸新聞

新聞記事のPDF版はこちら

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